ものづくり産業は、近年の急速なデジタル化の進展やコロナ禍を受け、事業環境が大きく変化している。持続的な事業運営や競争力の強化に向け、さらなるデジタル化が求められ、関連人材の育成・確保が急務となっている。

 先ごろ労働政策研究・研修機構(JILPT)が発表した「ものづくり産業のデジタル技術活用と人材確保・育成に関する調査」の結果によると、活用の割合が高い工程・活動は「開発・設計・試作・実験」「生産管理」「受・発注管理、在庫管理」「製造」が回答企業のうち5割以上となった。「取引先とのネットワーク化」も4割台だった。

 各工程・活動で一つでもデジタル技術を活用している企業は67・2%あった。業種別では業務用機械器具、電子部品・デバイス・電子回路、情報通信機械器具、生産用機械器具、はん用機械器具が70%以上。プラスチック製品も64・4%だった。

 活用しているデジタル技術は「CAD/CAM」の72・9%を筆頭に「生産管理システム」が67・3%、以下「ICT」「クラウド」「プログラミング」の順に割合が高かった。従業員300人以上の企業では「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」が44・4%、「AI」が32・0%に上った。

 活用の効果は「生産性の向上」を74・4%が挙げた。以下「開発・製造等のリードタイムの削減」「作業負担の軽減や作業効率の改善」「在庫管理の効率化」が50%台で続いた。おおむね狙い通りの効果を得ているようだ。

 またデジタル技術活用に向けて、84・7%が人材育成・能力開発で「強化した取り組みがある」と回答。自社の既存人材に対する研修・教育訓練のほか、デジタル技術に精通した人材の新卒・中途採用や出向・派遣などによる外部人材受け入れなどを挙げた。重点的に確保したい人材は、やはり「CAD/CAM」「生産管理システム」関連が5割と高い一方、比較的新しい分野である「IoT」は3割、「AI」は2割となった。

 課題としては、デジタル技術の活用・未活用企業ともに多くが「導入時のノウハウ不足」「活用で先導的役割を果たす人材の不足」「導入の予算不足」を挙げている。

 デジタル化は避けて通れない重要課題だが、さまざまなツールやサービスが登場、参考事例も集まるなど導入・活用環境の整備も進んでいる。その意味で、今は工程・活動や業務の効率化を図るだけでなく、ベテランの技能・技術を伝承する最後のチャンスとも言える。各社ギアを上げて取り組みを加速し次の成長、勝ち残りにつなげてほしい。

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