日本製鉄は、製造工程におけるCO2排出量を大幅に低減した純チタンの商業生産を開始した。スクラップ材の使用比率を高めCO2排出削減を実現したもので、ブランド「Tran Tixxii」(トランティクシー)の環境配慮型素材として展開する。金属素材では、神戸製鋼所が今年度から独自のCO2削減ソリューションを活用した低CO2高炉鋼材「Kobenable Steel」(コベナブルスチール)の販売を開始。製造プロセスの低CO2化は一つのトレンドになりつつある。日本製鉄は開発した純チタンについて、現時点で原料スクラップの調達や製造能力に課題はあるものの、年間300トンの製造・供給体制を構築する計画だ。

 チタンは地球上の構造用金属元素で4番目に多い金属素材。歴史は浅く、商業利用はクロール法が発明された1946年。耐食性や比強度、生体適合性といった優れた特性から、航空機や自動車といった輸送機器をはじめ電力・海水淡水化プラントなどの工業部材、さらにスポーツ用品などの民生用途やインプラントといった医療用途など幅広く使われている。しかしチタン鉱石から塩化、マグネシウム還元の2工程を経て、金属チタンの原料となるスポンジチタンを製造する工程で多くの電力を必要とする。

 新規商品の「Tran Tixxii-Eco」(トランティクシーエコ)は、チタンインゴットの原料としてチタンスクラップを50%以上添加し、省CO2・省資源を実現した環境配慮型素材。純チタンは、チタン素材の中で最も加工性がよい。極めて高純度に作り込みを行う必要があるため、チタンスクラップ使用に際して異材・異物が混入しないよう厳格な品質管理や前処理を要する。

 今回、日鉄直江津チタンの新型電子ビーム式溶解炉を活用し、溶解プロセスにおけるスクラップ配置および電子ビーム照射パターンの最適な組み合わせを開発した。これによりスクラップ多配合でも高品質を実現。原料の50%以上をスクラップリサイクルに置き換え、CO2発生量の50%超削減を可能とした。

 従来に比べてコスト高になるにも関わらず商品化できた背景に、アウトドア用品を展開するスノーピーク(新潟県三条市)の存在がある。同社はサステナブルな取り組みの一環として、日本製鉄と地球温暖化の課題解決に向けたコラボレーション協議を行ってきた。今回の商品化でも開発段階から協議を重ねた。黎明期の環境配慮型素材の商品化では、低CO2を付加価値として認めるユーザーの獲得が重要なカギとなりそうだ。

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