石油化学工業協会の会長に住友化学の岩田圭一社長が就任、新体制が始動した。重点取り組み項目に引き続き「保安・安全の確保」「事業環境の基盤整備」「グローバル対応の強化」を掲げたほか「2050年のカーボンニュートラル(CN)」を新たな挑戦課題に位置づけた。岩田会長には、生活に欠かせないエッセンシャルインダストリーとして石油化学の役割を強調するとともに、業界が抱える諸課題への対応で強いリーダーシップを期待したい。

 岩田会長は、6日の就任会で世界経済の不確実性の高まりに触れながら「石化産業を取り巻く環境も一層激しく変化していく」と先行きについて言及。内外の需給のみならず、米中関係やウクライナ情勢など地政学的リスクを注視しつつ経済・社会の構造課題に対応、CNの実現や循環型社会構築などを強力に推進していく必要性を説いた。

 取り組みの重点として和賀前会長時代から掲げる3項目に力を注ぐ。保安・安全の確保は、各社の自主保安を大前提としつつ「安全メッセージビデオ」の更新作業を進め、今夏の完成を目指す。保安推進会議や産業保安のスマート化も継続。経営トップから若手の現場管理者など、会員相互の情報共有も推進する。

 事業環境整備では、19年度に策定したガイドラインに基づき、24年度以降の定修日程の円滑な調整と、コンビナート地域における共通課題の解決に取り組んでいく。税制改正要望や国際的イコールフッティングの実現をはじめ、人材確保のための採用支援共同セミナー開催なども、業界各社が期待するところだ。

 コロナ禍で延期された国際会議の開催は、なお不透明な状況。しかし、ここにきて正常化も予想され始めている。積極的な参画によって議論をリードし、日本の石化産業の存在感を高めてほしい。

 新たな挑戦課題と位置付けた50年のCN実現では、エネルギーや原燃料転換、ライフサイクルアセスメント(LCA)算定などで業界横断の取り組みが欠かせない。岩田会長は「個社、コンビナート、業界ごとに課題は異なる」としながらも「共通の基盤を整えて議論を進めるため、必要に応じてガイドラインを設けるなどの支援にも努めたい」と意欲をみせる。

 地球温暖化や海洋プラスチック問題への対応、循環型社会構築など課題は山積している。岩田新体制では、これらを一つずつ解きほぐし、石油化学産業が持続可能なかたちへ移行するための議論を整理してもらいたい。資源循環の仕組みの社会実装など、産業界一体となった取り組みでも先導役が期待される。

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