国が6月から実施する新型コロナウイルスの感染歴を調べる1万人規模の抗体検査に、米アボット、スイス・ロシュ、米モコバイオの3社の検査薬・測定機器を採用することが決まった。厚生労働省は海外で一定の評価を得ている製品を選択し、感染実態の把握に利用する。3社にとっては検査実績を積み上げられ、薬事申請にも弾みがつく。

 抗体検査薬は国内に現状、約15製品が出回るが、これまでの性能評価では陰性を陽性と判定するなど性能が不十分との指摘があった。ロシュやアボットなどの抗体検査薬は米国食品医薬品局(FDA)の性能評価で精度の高さが示されていた。

 一方、PCR検査薬や抗原検査薬はすでに製造販売承認された製品があるのに対して、抗体検査は新型コロナに対する免疫の研究が深まっていないこともあって承認品がまだない。薬事承認を得るには一定規模の集団を対象にした疫学調査による性能評価が欠かせないとされる。

 国が実施する今回の抗体保有調査は東京、大阪、宮城の3都府県で各約3000人の一般住民を対象に今月実施する。対象者は性別や年齢を母集団分布となるよう層別化し、無作為抽出する。採用された3社にとっては性能評価の機会が広がり、薬事申請に近付く可能性がありそう。

 今回の調査はウイルスの感染後期に体内で産生される「IgG抗体」の保有率を調べる。アボットは化学発光免疫測定法、ロシュは電気化学発光免疫測定法とそれぞれ測定原理が異なるが、検査装置は全国の病院や検査室に導入されている。モコバイオは大阪市立大学と連携している。

 新型コロナは無症状感染者が多くを占めるとされる。第2波、第3波の流行も警戒されるなか、政府では感染の実態を掴んだうえで、今後の新型コロナウイルス対策の立案に生かす。

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