★DIC
 DICの2022年1~6月期決算は営業利益が前年同期比12・2%減の239億円だった。自動車など主要市場における需要減退で全体の出荷数量は減少。一方で主要製品の値上げ効果などで3事業部門とも増収となり、売上高は同33・1%増の5214億円に拡大した。
 パッケージング&グラフィック事業部門はパッケージ用インキが堅調な一方、出版用が低迷するなど分野によって状況が分かれた。課題とされた日本国内での値上げなどに進展が見られたものの、原材料価格の上昇スピードに追いつかない状況が続いて26・9%の減益となった。
 ファンクショナルプロダクツ事業部門ではエポキシ樹脂などデジタル市場向けの高付加価値品で堅調な出荷が続き、減益幅を5・5%にとどめた。自動車減産によるPPSコンパウンドへの影響や中国での出荷停滞を受け、部門全体の出荷数量は前年実績を下回った。
 カラー&ディスプレイ事業部門は、旧BASF顔料事業であるC&E社の加算などで2・2倍の大幅増収となった。だが顔料需要は欧州などで振るわず、自動車塗料やプラ用顔料向けを中心に減少。カラーフィルター用顔料も22年1~3月期に続いてパネルメーカーによる在庫調整の影響を受けた。
 通期予想は各利益段階とも下方修正。おもにパッケージング&グラフィック事業部門の業績を反映し、営業利益は5月の前回予想比40億円減の500億円とした。売上高はさらなる値上げ進捗などを織り込み、同700億円増の1兆1000億円に引き上げた。
★資生堂
 資生堂の2022年1~6月期決算(国際会計基準)は、コア営業利益が前年同期比23・9%減の175億円だった。日本の需要回復の遅れ、中国市場におけるロックダウン、日用品事業の売却が影響した。純利益は「DOLCE&GABBANA」とのライセンス解消にともない281億円の最終損失となった前年同期から、162億円の黒字に転換した。
 売上高は0・4%減の4933億円。消費が回復している欧州、米州、さらにトラベルリテール事業は2ケタ成長をみせた。一方、厳しい環境が続いた日本事業の売上高は17・4%減の1157億円。減収と日用品事業譲渡の影響でコア営業損失74億円となった。中国事業はEC(電子商取引)は伸びたが、ロックダウンの影響で売上高は19・7%減の1157億円、コア営業損失20億円だった。
 通期予想は日本、中国の市場前提を見直したとともに、中長期を見据えたブランド強化、人材育成への投資を実施するとして、売上高1兆700億円、コア営業利益400億円、当期利益255億円に下方修正した。
 10日の会見で魚谷雅彦社長は「コロナによる負のインパクトは大きいが、縮小均衡にならないためにも攻めの投資が大切。中長期を見据えたブランド強化、人材育成として下期に100億円の追加投資を決定した。23年にはV字回復を見込むが、ブランド、人財投資は一過性ではなく、継続して強化していく」と話した。
★カネカ
 カネカの2022年4~6月期決算は増収増益だった。売上高は前年同期比17・4%増の1927億円、営業利益は3・1%増の122億円、経常利益は37・1%増の147億円、純利益は35・6%増の105億円だった。ニュートリションが減益となったが、そのほか3つのソリューションユニット(SU)を増益とした。
 セグメント別営業利益はマテリアルSUが15・5%増の108億円。カ性ソーダの海外市況が高値で推移したことが貢献した。クオリティ・オブ・ライフSUは0・3%増の46億円で微増益。ポリスチレン製品、頭髪製品用機能繊維などで原燃料価格上昇の転嫁を進め、収益性を維持した。
 ヘルスケアSUは66・9%増の39億円と大幅な増益となった。ASO治療用などの血液浄化器、カテーテル販売が好調。バイオ医薬品はカネカユーロジェンテックでのコロナワクチン受託製造が順調に推移した。
 ニュートリションは43・6%減の8億円で大幅な減益となった。フーズ事業の販売が低調。還元型コエンザイムQ10販売で前年同期に生じた特殊要因との差異で減益幅が広がった。
★クラレ
 クラレの2022年1~6月期決算は、売上高、各利益とも過去最高となった。エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)の「エバール」の食品包装用途など各種製品が好調に推移したほか、価格転嫁も後押しした。今期から新しい会計基準(収益認識に関する会計基準)を採用し、売上高が3580億円、営業利益が381億円、経常利益が379億円、純利益が242億円。
 セグメント別では、ビニルアセテートの売上高が1854億円、営業利益が336億円で増収増益。ポリビニルアルコール(PVA)のポバール樹脂が米国生産拠点での不具合や物流混乱の影響を受けて販売量が減少したが、エバールや水溶性ポバールフィルムの洗濯・食洗機用個包装洗剤向けの販売が拡大した。機能材料も売上高が778億円、営業利益が33億円で増収増益。環境ソリューション事業部の活性炭が欧州を中心に拡大。水処理用途の中空糸膜も堅調に推移した。
 一方、イソプレンは、売上高が319億円、営業利益が25億円の増収減益。原燃料費や物流費の高騰に伴う価格交渉は進展したが、物流の一時的な混乱が響いた。ポリアミド(PA=ナイロン)の「ジェネスタ」は、自動車向け半導体の部材不足や中国のロックダウンの影響を受けて販売量が減少した。
 通期の業績は、価格転嫁がさらに進むとして売上高を上方修正した。売上高が期初予想から600億円増の7400億円。利益面は変わらず、営業利益が780億円、経常利益が750億円、純利益が450億円と予想する。
 川原仁社長は10日に開催した決算説明会で、22年1~6月期は5月に上方修正した業績予想を上回る水準で着地できたことから「(今期から5カ年の中期経営計画の初年度の業績として)よい滑り出しができた」と総括。今中計で予定している設備投資についても、一部で新型コロナによる着工の1~2カ月の遅れは見られているものの順次立ち上がっているとして、「来期に向けてよい足がかりを作れた」と語った。
★ADEKA
 ADEKAの2022年4~6月期決算は、売上高が前年同期比21・1%増1017億円となった。海外の農薬販売が好調なことに加え、値上げや円安効果も寄与した。一方、赤字が続く食品事業を中心に原料価格の高騰が影響し、営業利益は1・4%増にとどまった。また、前期に中期経営計画の財務目標を前倒しで達成したことを受け、中計の営業利益目標を引き上げることも発表した。
 農薬を中心とするライフサイエンス事業は、売上高が45・5%増、営業利益が80%増。海外の農薬販売が伸び、円安効果もあった。樹脂添加剤事業も2ケタの増収増益で、値上げや為替が寄与。情報・電子化学品事業は、半導体材料の販売は増えたがディスプレイ関連材料は減った。
 原料高騰の影響がとくに大きいのが食品事業。値上げにより増収は確保したが、価格転嫁が追いつかず8億円の営業損失を計上し、1~3月期(9億円)に続く赤字となった。
 全体で20億円超の為替差益があり、経常利益は12・9%増の104億円。
 農薬の販売増加や各事業の値上げ、円安効果を反映し、22年4~9月期と23年3月期通期の売上高予想を上方修正した。通期は期初予想から140億円引き上げる。
 前期にスタートした3カ年中計の財務目標も修正した。23年度の営業利益目標としていた350億円を前期に達成したため、420億円に引き上げた。売上高は500億円増の4300億円を想定する。中計の基本方針や戦略は変更しない。
★サカタインクス
 サカタインクスの2022年1~6月期決算は、営業利益が前年同期比59・8%減の20億円だった。各地域で原材料高の影響を色濃く受けたが、ロックダウンに見舞われた中国を除いてパッケージインキがおおむね堅調に推移。値上げ効果も合わせて全セグメントが増収となり、売上高は16・8%増の1035億円となった。
 インキコストの上昇が104億円あまりの利益押し下げ要因となり、印刷インキ事業は各地域とも減益幅が大きかった。日本セグメントは80%の減益。食品包装用のグラビア・フレキソインキなどが堅調に推移した一方、新聞・オフセットインキや機材販売の低調さが響いた。アジアはインド市場の回復や東南アジアでの拡販などが進んだが、原材料高の影響が大きく58・8%の減益で着地した。
 欧米は原材料高に加え、物流コストや人件費などの経費増が大きく影響した。米州は59・9%の減益で、パッケージ用インキに加えてアルミ缶用のメタルインキやオフセットインキが好調だった点が他地域と異なる。欧州は営業損失3億円を計上した。
 機能性材料事業は減益幅を8・6%にとどめた。カラーフィルター用顔料分散液がディスプレイ需要の減退で伸び悩んだ一方、アジア向けを中心とするトナー輸出の回復などがみられた。
 通期予想は各利益段階とも下方修正。営業利益は5月の前回予想比20億円減の50億円とした。一方で値上げの進展や為替差益の拡大を見込み、売上高は同230億円増の2210億円に引き上げた。
★大日精化工業
 大日精化工業の2022年4~6月期決算は、営業利益が前年同期比53・7%減の11億円だった。原材料高を主要製品の価格転嫁で吸収しきれなかったほか、車両用途の多いコンパウンドやウレタン樹脂などの製品は自動車減産の影響を受けた。
 各事業での値上げ効果や食品包装向け製品が比較的好調に推移したことを受け、売上高は4・9%増の317億円を確保した。グラフィック&プリンティング マテリアル事業ではオフセットインキが低調だった一方、飲料ラベル用などのグラビアインキが好調。13・1%と増収幅が大きかったが、新工場への移転費用などがかさんで営業損失3億円を計上した。
 その他2事業は自動車・家電業界での生産調整の影響を受けた。カラー&ファンクショナル プロダクト事業では値上げ効果などによる増収がわずかにとどまり、営業利益は48・9%減で着地。ディスプレイ向けの顔料分散体が需要減退を受けて低調だったほか、コンパウンド・着色剤も振るわなかった。ポリマー&コーティング マテリアル事業も車両向けウレタン樹脂が低調となり、19・8%の減益となった。
 通期予想は据え置いた。
★関東電化工業
 関東電化工業の2022年4~6月期決算は、売上高が前年同期比33・3%増の183億円、営業利益は58・1%増の36億円、経常利益は76・3%増の42億円、純利益は73・5%増の29億円と増収増益となった。売上高、各利益とも同期間として過去最高を達成した。電池材料の当初予想を上回る伸長に加え、半導体・液晶用特殊ガス類も堅調に推移することから、2022年4~9月期業績予想を上方修正した。
★日本化学工業
 日本化学工業の2022年4~6月期決算は、減収減益となった。営業利益は前年同期比38・3%減の9億円、経常利益は33%減の10億円、純利益は35・4%減の6億9000万円。売上高は4・5%減の97億円だった。
 主なセグメント別の売上高は、化学品が48・2%増の55億円。めっき用のクロム製品が拡大し、リン製品が一般工業や半導体向けで伸長した。原材料高による販売価格の改定も寄与した。機能品は20・9%減の37億円。量子ドット向けのホスフィン誘導体が落ち込み、農薬や電池材料、電子セラミック材料、高純度電子材料なども伸び悩んだ。
★ラサ工業
 ラサ工業は10日、2023年3月期の純利益が前期比26%増の32億円になる見通しを発表した。従来予想を6億円上回る。半導体向け高純度リン酸や化合物半導体の原料に使うガリウムなどの高純度無機素材の需要が堅調に推移する。原材料価格の上昇や減価償却費の増加などに伴うコスト増をこなして増益幅が拡大する。
 売上高は48・5%増の526億円、営業利益は29・5%増の45億円と、従来予想から99億円、9億円それぞれ上方修正した。売上高、各利益とも2期連続の過去最高を見込んでいた従来予想から増収増益幅が拡大する。
 半導体向け高純度リン酸は台湾子会社の増産投資による販売増や原料高の価格転嫁、半導体向け高純度赤リンは事故で停止中だった三本木工場(宮城県大崎市)での生産が再開により増収増益を確保する。
 同日発表した22年4~6月期決算は売上高が前年同期比55・4%増の121億円、営業利益が85・8%増の13億円、純利益が93・6%増の10億円だった。
★東洋合成工業
 東洋合成工業の2022年4~6月期決算は、営業利益が前年同期比1・8%減の14億円となった。感光材や高純度溶剤の販売が拡大した一方、先端材料のR&D費用などがかさんだ。経常利益は為替差益によって21・2%増の17億円、純利益は20・5%増の12億円、売上高は11・1%増の92億円だった。
 セグメント別の営業利益は、感光材が0・4%減の9億9000万円。ロジック・メモリー向けともに旺盛な需要が続いたが、技術開発や能力増強などの費用が重しとなった。化成品は前年同期に駆け込み需要があったため、4・7%減の4億6000万円となった。
★東洋炭素
 東洋炭素の2022年1~6月期決算は、売上高が前年同期比15・7%増の202億円、営業利益が28・4%増の30億円と、2ケタの増収増益を達成した。半導体を中心とした各用途における底堅い需要と急速な円安進行の影響から、好調に推移した。
 特殊黒鉛製品は、単結晶シリコン製造用やSiC(炭化ケイ素)半導体向けを中心に化合物半導体製造用が大きく伸長。SiCコーティング黒鉛製品は、シリコンやSiC半導体向けの伸びに会わせ、堅調に推移。C/Cコンポジット製品は、工業炉用や半導体用の需要が好調だったことにより売り上げを伸ばした。
 通期業績予想は上方修正。売上高430億円、営業利益73億円、経常利益76億円、純利益53億円とした。売上高はほぼ計画通りだが、22年7~9月期以降も円安基調が一定程度継続すると見られることから為替レートの前提を変更し、通期業績予想を修正した。
★アグロ カネショウ
 アグロ カネショウの2022年1月~6月期決算は、主要剤の土壌消毒剤が国内外で売り上げを伸ばしたが、研究開発費や販管費の増加から、増収減益を計上した。売上高が前年同期比3・6%増の85億円、営業利益10・8%減の8億5500万円、純利益17・3%減の5億500万円。
 土壌消毒剤の売り上げが2・8%増の39億円となったほか、害虫防除剤、除草剤も増収だった。
 通期業績は、売上高152億円、営業利益9億9000万円、純利益5億1600万円を見込む。
★チッソ
 チッソの2022年4~6月期決算は、増収大幅増益となった。社内の構造改革や円安が貢献したほか、肥料の大幅値上げに伴う前倒しの出荷が大きく伸張した。売上高が前年同期比10・9%増の377億円、営業利益が約2・8倍の35億円、経常利益が3倍の58億円、純利益は30億円を計上。
 同社では、中期経営計画で掲げている事業拠点の集約化や効率的な人員配置といった構造改革を続けており、業績を後押しした。セグメント別では、繊維や肥料といった加工品事業が拡大した。繊維製品は中国のロックダウンの影響で不織布の需要は低下したが、国内で原綿の出荷が堅調に推移した。
 一方、機能材料はシリコーンのコーティング材やコンタクト用途で売り上げを伸ばしたが、液晶材料が減少した。アルコールや樹脂などの化学品事業は、ウクライナ情勢や中国のロックダウンによりアジアでの需要が低迷し、業績に響いた。ポリプロピレンも主力の自動車関連用途で半導体不足による減産が響き、出荷が減少した。
 通期の業績予想は、不確定要素があるとして、未定としている。

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