新型コロナウイルス感染対策が長期戦の様相を呈してきた。在宅勤務・テレワークは期間延長や利用条件の緩和などの措置がとられ、出社が必要な場合も交代勤務などにより感染リスクを減らしている。営業などの実務面で大きな影響は出ていないという声が聞かれるが、採用活動や入社式の予定変更など影響は多方面に及んでいる。一方、中国では湖北省を除き物流の遅滞が改善されてきた。現地拠点の稼働率が上がってきた日系化学関連企業も複数あるが、顧客見合いでの稼働もいぜん多い。各社とも業績のマイナス影響を見込むが、需要がどこまで落ち込むか現時点で見通すことは難しい。
 新型コロナに対する警戒を緩めることはできない―。今月9日の政府の専門家会議の見解を受け、住友化学やAGC、ダイセル、資生堂、ライオンなど当初13~15日までと期間を区切ってテレワークや時差通勤を行っていた企業がその期間を延長した。在宅勤務を含むテレワークをより行いやすくするため条件を緩和する企業も多い。三菱ケミカルは週1回の出社義務を緩和した。学校の臨時休校を踏まえ、特別休暇制度を新設・適用する企業も増えた。
 一方で出社せざるを得ない従業員については、グループを分割しての交代勤務、食堂や更衣室の利用時間を分けるなどの感染予防策を講じられている。通勤ラッシュを避けるため自家用車での通勤を認めるケース、管理部門や営業部門における最重要業務を通常勤務とは別の場所に移すことを検討する企業もある。
 自社だけでなく取引先も国内出張や外出を自粛しているため、テレワークによる営業活動など実務への悪影響はほとんど感じられないという声が多く聞かれる。テレワーク制度の導入構想を持ち今回時限的に運用を開始したある企業は、これを機に本格導入を考えているという。ただ、会社説明会を全て中止し説明会や面接をインターネット上で行うなど採用活動では一定の影響が出ており、入社式の予定変更を決定・検討する企業も多い。
 原材料の調達面、製品の出荷など、化学関連企業の国内サプライチェーンへの目立った影響はいぜん出ていない。操業を再開した中国拠点については工場によって差があるが、稼働率は回復傾向にあるようす。機能化学品メーカーでは通常に近い操業やフル稼働の拠点もあった。物流面はいぜん遅れがあるものの、湖北省を除き改善が進んでいる。原材料の調達に大きな影響が出ているという企業はほとんどなかった。一方で、顧客の操業見合いで中国拠点を稼働させている企業も多く、さらなる消費の冷え込みが懸念されている。

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