エーザイは、新型コロナウイルス感染症の治療薬開発に乗り出す。新型コロナの重症患者の多くで発生し、重い肺炎を起こす過剰な免疫反応のサイトカインストームを抑制する新薬候補「エリトラン」について6月に国内外で治験を開始する。順調に進めば2020年内に試験結果を得られる見通しで、承認申請に進む可能性がある。新型コロナ流行の第2波、第3波を見据えて治療選択肢の充実に寄与したい考えだ。 

 エーザイの内藤晴夫CEOが13日に開いた決算説明会で明らかにした。エリトランは同社が重症敗血症の治療薬として過去に開発していた経緯がある。2011年当時は有用性を証明できず、開発を中止した。エリトランはサイトカインストームの原因となる生理活性物質が生み出される経路を最上流でおさえる働きがあり、新型コロナに対しては「一剤で一気に肺炎の重症化を抑制できる可能性がある」(内藤CEO)という。

 既存薬などから新型コロナに効果を見込める治療薬を探索する国際的ネットワークに参画して開発を進める。6月から国際共同治験を開始する予定で、日本では治験施設の調整に入った。内藤CEOは「一日でも早く治験を始めるため治験薬の品質確認を急いでいる」と話した。治験薬は400症例分を準備できるとし、今年末までに治験結果を得られる見通しだ。

 このほかにも同社ではワクチンの抗体産生能を高める免疫増強剤の提供を検討しているほか、ビル&メリンダ・ゲイツ財団や製薬企業によるコンソーシアムに参画し、ワクチンや治療薬の開発に協力しているという。

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