厚生労働省は21日、英アストラゼネカ(AZ)、米モデルナがそれぞれ開発した新型コロナウイルスワクチン2剤を特例承認した。モデルナ製は週明けから始まる大規模接種会場で使われる。一方、AZ製は、海外で報告されている血栓症リスクを踏まえ、当面は接種が見送られる。

 モデルナ製「COVID―ワクチンモデルナ筋注」は公的な臨時接種事業の対象になり、24日から始まる東京、大阪の大規模接種会場で使われる。接種勧奨や努力義務の対象、接種後に経過観察する時間などは先に実用化されているファイザー製と同じ。ファイザー製は16歳以上に対して承認されているが、モデルナ製は18歳以上。薬事承認上は4週間で2回接種することになっているが、接種事業では間隔を「20日以上」と柔軟な運用を認める。

 ファイザー、モデルナ製と2種類のワクチンが接種可能になるが、「1施設1ワクチン」の方針は当面維持する。地方自治体による接種事業はファイザー製、国による集団接種事業はモデルナ製と位置づける。

 一方、AZ製「バキスゼブリア筋注」の接種は、接種事業での位置づけが決まるまで見送られる。発症頻度は極めて低いものの、血小板減少をともなう重篤な血栓症(TTS)が海外で報告されているためだ。英国の発表によると、TTSの頻度は接種100万回あたり約10回。60歳未満の女性が多く、死亡例も出ている。英国では40歳未満には他社のワクチンを推奨。ドイツは接種対象を60歳、フランスは55歳以上に制限している。

 日本でも薬事上は18歳以上を対象に承認したが、公的接種での対象年齢や位置づけは今後検討する。TTSに対する治療ガイドラインなどを整備し、海外の推奨状況などを踏まえて決める方針。

 21日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会では、AZ製の接種延期は外部専門家からも支持されたが、「むやみに長引かせるべきではない」などとの意見も出た。多くの自治体で7月までに高齢者の接種が完了する見込みのなか、対象年齢を制限するとなれば、接種可能な年齢層はさらに限定される。AZ製には、ファイザー、モデルナ製より長期保存しやすく、国内製造されるなどの利点があることから「日本で接種できるワクチンから排除すべきではない」などの声も上がった。

・流通体制も本稼働へ

 モデルナ製ワクチンの承認を受け、国内流通を担う武田薬品工業は、接種会場への供給を開始する。同ワクチンを長距離輸送や長期保存するにはマイナス25~マイナス15度C環境の厳格な温度管理が必要なため、物流関連各社と連携して欧州から日本各地へのコールドチェーン流通体制を準備してきた。

 欧州から日本までの国際輸送業務全般は近鉄エクスプレスが担い、ブリュッセルから関西国際空港(関空)までの貨物便を日本航空(JAL)が運航。関空での受け入れ対応は関西エアポートが担当する。

 メディパルホールディングスと関連会社が全国の接種会場への流通を展開する。日本医薬品卸売業連合会(卸連)の会員企業40社も地域担当卸として協力する。

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