厚生労働省は24日、米メルクが開発した新型コロナウイルス感染症治療薬「モルヌピラビル」を特例承認した。承認申請時に提出した臨床試験データより最終的な有効性が低下する結果だったが、軽症患者に対する新たな治療選択肢としての有用性はあると判断した。医療機関からの受注が始まり、週明けから同剤による治療が可能になる。自宅療養者でも服用しやすい飲み薬が日本でも使えるようになる。製品名は「ラゲブリオ」。

 投与対象は重症化リスクがある18歳以上の軽症~中等症患者。1日2回、5日間服用する。動物実験で胎児毒性が報告されているため、妊婦の服用は禁忌。臨床試験は発症から5日内の感染者を対象に実施し、海外でも同様の条件で使用許可されているが、日本では「症状発現から速やかに投与を開始する」とし、明確に開始時期を制限しない。

 コロナ治療で初めての飲み薬。自宅療養者の場合、診断した医療機関が特定の薬局へ処方箋を発行し、薬局から患者の自宅などへ配送・郵送される。政府は約160万回分(160万人分)の供給契約を米メルクと結んでおり、年内にまず20万回分が準備されている。

 海外でも緊急使用許可などが出始めているが、同剤の有効性をめぐる評価は分かれている。同社が承認申請の根拠とした臨床試験では、申請時の中間データでは重症化リスクを半減させる結果だったが、最終評価では同3割減にとどまった。同試験は世界各国で実施され、日本人は8人参加した。

 米国では、米ファイザー製の飲み薬「パクスロビド」が同様の臨床試験設定で同9割減という高い有効性が報告され、同剤などが使えない患者に限定してモルヌピラビルが緊急使用許可された。フランス政府は有効性が期待できなくなったとしてメルクとの供給契約を取り消した。24日に承認審議した厚労省の専門家部会でも有効性に関する議論があったが、中間、最終データ両方を総合的に評価し、「有効性が否定されるものではない」として承認了承された。

 モルヌピラビルはウイルスの複製に必要な酵素「RNAポリメラーゼ」の働きを阻害する化合物。メルクと米リッジバック・バイオセラピューティクスが開発した。富士フイルム富山化学の「アビガン」と同じ作用機序を持つ。

提供・米メルク

試読・購読は下記をクリック

新聞 PDF版 Japan Chemical Daily(JCD)

新型コロナウイルス関連記事一覧へ

HP独自・先行の最新記事もっと見る