米ノババックスは、開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、米国での緊急使用許可(EUA)申請時期がさらに遅れる見通しを明らかにした。9月までに申請予定だったが12月までに延ばす。これまでも製造の遅れや資材不足などが原因で後ろ倒しにされてきた。日本では武田薬品工業が申請する予定だが、同様に遅れるかは明らかにしていない。新興国などでは申請を始めた。
ノババックスのコロナワクチンは、数万人の大規模臨床試験で発症予防効果の有効率が90%程度を記録している。米ファイザー製や英アストラゼネカ(AZ)製とは異なるタイプのワクチンとして早期実用化が期待されているが、申請手続きを前に足踏み状態が続いている。このほど開催した決算説明会で、各国での申請予定を更新した。
先に供給が始まりそうなのは新興・途上国。インド血清研究所を通じてインド、インドネシア、フィリピンで申請手続きを完了した。月内に世界保健機関(WHO)にも申請する。来月には英国、カナダなどでも申請手続きを終える予定。
一方で米国は、7月中にもEUA申請する方針だったが、10~12月期になる見通し。同社によると、米国食品医薬品局(FDA)が求めた製造プロセスのバリデーションに関わる手続きなどに時間がかかっている。開発当初は昨年中の申請も可能としていたが、製造体制の課題や材料不足により大幅に遅れた。
日本では武田薬品が申請予定。早ければ年内の供給開始を目指していたが、米国などと同様に遅れるかは明らかにしていない。
供給計画に新たな遅れはなく、9月末までに月産1億回分、12月末までに同1億5000万回分生産できる体制を完成させる。ワクチン原液は富士フイルム子会社、効果を増強するアジュバントはAGC子会社などが製造受託し、新興・途上国向けはインド血清研究所が製造している。日本向けは武田薬品が国内製造。
ノババックスは、最初の接種から6カ月後に3回目の追加接種をした臨床試験データも発表した。従来株に対する抗体価(中和抗体、IgG抗体)は、2回目後のピーク値より4・3、4・6倍に上昇した。同社はまず通常の2回接種ワクチンを各国で承認申請した上で、3回目のブースターワクチンを申請する予定。