厚生労働相の諮問機関である薬事・食品衛生審議会(薬食審)医薬品第一部会は22日、米バイオジェンとエーザイが共同開発したアルツハイマー病(AD)治療薬「アデュカヌマブ」の承認について審議し、現時点では承認を了承しない結論を出した。提出された臨床試験結果に一貫性がなく、実際の治療効果が確認できないと評価し、有効性や安全性を証明する追加の臨床試験データを求めた。治験を追加実施することになれば、同剤が再び承認審議されるのは数年後になる可能性もある。

 両社は申請に際して複数の臨床試験データを提出している。いずれの試験もADの原因物質とされる「アミロイドベータ(Aβ)」を減らす効果は確認されたが、症状進行を抑制する臨床的有効性については証明できない試験もあった。今回の審議では、これらの試験結果に一貫性がなく、Aβ減少と治療効果の相関が証明されていないことが指摘され、「現時点のデータから有効性を明確に判断するのは困難」として承認了承にいたらなかった。投与後に脳の浮腫・出血が生じる副作用(ARIA)についての懸念も上がった。

 現段階で承認は見送られたが、厚労省は「この薬剤のポテンシャルを否定するものではない」と強調。申請者であるバイオジェン・ジャパンから追加の臨床試験データが提出されれば再審査し、部会でも承認を再審議する。ただ提出するデータの条件や提出期限は明確にしておらず、「追加試験をやるなら一定の年数はかかるのではないか」(同省)としている。

 両社は米国で迅速承認された条件として、同剤の臨床的有効性などを再検証する追加試験の実施を求められている。米国などで早期AD患者を約1300人登録し、来年5月以降に始める計画。厚労省は同試験データが提出されれば再審議する可能性も示しているが、試験の主要結果が出るまで約4年かかる見込み。

 欧州でも今月、承認に否定的な審査結果が出た。理由は日本と同様だった。両社は近く再審査を請求する。

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