塩野義製薬は2日、開発中の新型コロナウイルスワクチンの製剤を変更したと発表した。従来の製剤では十分な抗体反応が見込めず、効果を高めるアジュバント(免疫増強剤)を変えて再開発する。今月、追加の臨床試験を開始する。最終段階の臨床試験を年内に始め、年度内の実用化を目指す。これまで最短で年内供給開始も可能としていたが、遅れる見通しになった。

 同社は昨年12月に最初の第1/2相臨床試験(P1/2)を始めた。安全性や細胞性免疫による予防効果には問題がなかったが、中和抗体価は十分上がらなかった。中和抗体による液性免疫も増強するため、アジュバントを変更したワクチン製剤を再開発した。ワクチン抗原は変えていない。新旧アジュバントとも、他のワクチンで使われているような既知のアジュバントという。

 製剤が変わったためP1/2を再実施する。症例数は前回より少なく100人程度。安全性や免疫原性、最適な投与量などを評価する。7月末に治験届を提出し、今月から接種が始まる予定。3週間隔で2回接種する。問題がなければ、3000人規模の臨床試験を国内で実施する。発症予防効果など実際の臨床的有効性も評価する。コロナワクチン未接種者のみを対象にする。

 P3段階にあたる最終治験は年内開始を目指す。数千人規模で他社ワクチンと比較する臨床試験、1万人以上の規模でアジア、アフリカを対象にプラセボと比較する臨床試験と2種類の試験デザインを想定。薬事当局の方針や他社ワクチンの流通状況などを見ながら実施方法を決め、早く結果が出そうな試験で承認申請に持ち込む。問題がなければ、来年3月までの承認取得と供給開始が可能と見ている。

 手代木功社長は今年5月の時点では、国内向けワクチンとして「条件付き早期承認」のような特例が認められれば、年内の供給開始が可能との見通しを示していた。

 生産準備は計画通り。委託先のUNIGEN(岐阜県池田町)で設備を拡張し、6000万人分の供給体制を年内に整える。ベトナムでの生産も視野に入れ、同国政府と協議中。

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