富山県は3日、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき、後発医薬品(ジェネリック医薬品)国内最大手の日医工に対して約1カ月の業務停止命令を下した。GMP違反などによって製品の自主回収を繰り返したためだ。後発薬をめぐっては小林化工(福井県あわら市)が過去最長となる116日の業務停止命令を受けたばかり。後発薬に対する信頼感回復への道のりは険しさを増している。

 日医工の富山第一工場(富山県滑川市)の製造業務で5日から来月5日までの32日間、日医工の製造販売業務で5日から28日までの24日間の業務停止を命じた。小林化工とは異なり、健康被害が出たという報告はない。また、市場に流通している製品について「有効性・安全性に何ら問題はない」(同社)との認識だ。だが、後発薬トップメーカーであるにもかかわらず承認手順と違う生産など品質・製造管理問題によって、昨年来、75品目に及ぶ度重なる自主回収を問題視した格好だ。

 業務停止期間中の製品供給については在庫出荷で対応する。品質確認は終えているが、一部製品では「供給制限を行う場合もある」(同社)。そのため、代替供給のしわ寄せが大きくなることも想定され、「小林化工だけでも大変なのに、日医工も加わるとは」(ジェネリックメーカー首脳)と不安の声も上がる。

 今回の業務停止命令を受け、日医工の田村友一社長は同日会見し、処分を「重く受け止める」と謝罪した。さらに田村社長を3カ月間の無報酬とする処分を新たに決定したほか、再発防止策として5つの取り組みを示した。

 このうち、品質・製造管理システムの導入といった設備投資による対策は今後、数年かけて実施する計画。誤った処理を防ぐため、データ記録・管理の電子化も図る。全製品の記録書と製造実行システムとの自動連携は2023年内に完了する予定だ。

 GMP違反などが続出した背景の1つとして、同日公表した報告書では、後発薬の需要増によって製造、品質管理の現場がひっ迫していたことを指摘した。田村社長は「現場に無理をかけ過ぎた」と認めたうえで、「無理のない生産計画・体制の策定と維持」も再発防止策の1つに掲げた。

【解説】

 「1カ月ならば在庫でも対応できる」(後発薬メーカー関係者)との見方もあるが、やはり最大手である日医工に対する業務停止処分のインパクトは強い。一旦、回収を終えた側から次の回収を繰り返していることに対し、医療現場からは「ああ、またか」と諦め半分の声も聞こえてくる。

 小林化工に続いて、国民の後発薬への信頼感を打ち砕いたことは重い。信頼回復には再発防止策を打ち出すだけでなく、目に見える行動で示していくしかない。それがトップメーカーとしての責任の果たし方だ。(吉水暁)

行政処分の会見で謝罪する田村友一社長(中央)ら経営陣

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