横浜市⽴⼤学は12日、ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンが変異株にも有効な可能性を示す研究結果を発表した。接種した日本人105人の約9割で、変異株7種類と従来株に対する中和抗体が作られていた。国内でも感染が広がっている英国型変異株やインド型変異株などに対しても、ほとんどの人で抗体反応が確認された。感染歴がある場合は1回の接種で免疫が増強された。国産の検査法を用いて変異株に対するワクチンの抗体反応を評価した日本初の研究データになる。研究チームは他社製ワクチンの評価などにも取り組み、独自開発した抗体測定法の社会実装も進めていく。

 ファイザー製ワクチンを接種した未感染の日本人105人の血清を使い、中和抗体の保有率を調べた。調査対象にしたのは、従来株と7種類の変異株。2回目接種から1週間後時点で、約9割(93人)が全8種類のウイルス株に対する中和抗体を保有していた。

 日本でも流⾏中の「N501Y変異」がある英国型(B.1.1.7型)とブラジル型(P.1)は各94%、感染爆発が懸念されているインド型(B.1.617)は97%の被験者で十分な中和抗体が確認された。最も抗体陽性率が低かった南アフリカ型(B.1.351)も90%と高水準だった。従来型(D614G)の陽性率は99%。ただし個人差もあり、1回接種後は抗体がまだ形成されない人が一定数いた。

 研究期間中に感染した人の接種後データも報告した。感染者は6人で、いずれの参加者も1回目の接種後すぐに抗体価が上昇した。感染により一定の免疫が形成されているため、接種1回だけで十分な免疫増強が期待できるという。

 研究チームは、月内にも日本で承認される見込みの米モデルナ製、英アストラゼネカ製ワクチンについても同様の研究を行う予定。モデルナ製は海外の接種者の血清サンプルで測定したところ、ファイザー製と似た傾向が確認できたという。

 抗体測定に使ったのは、独自に開発した中和抗体の迅速測定システム「hiVNT」。約3時間で測定でき、多くの検体の同時測定や、変異株の置き換えも容易という。複数の企業と技術移転を協議しており、民間検査会社による実用化も進めていく。

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