◆大陽日酸

 大陽日酸の2020年3月期決算(国際会計基準)は純利益が前期比29・2%増の533億円だった。米国事業は製造業の生産活動が底堅く産業ガスの出荷が前期並みで推移したほか、独リンデから買収した水素・一酸化炭素を供給する「HyCO(ハイコ)」事業も増益に寄与した。米プラクスエアからの買収でセグメントに加わった欧州事業、魔法瓶のサーモス事業では新型コロナウイルスの影響が出た。

 売上収益は14・8%増の8502億円、コア営業利益は37・2%増の903億円。新型コロナの世界的な感染拡大により欧州事業ではイタリア、スペインなどで3月の売上収益が前年同月割れし、サーモス事業も海外工場の稼働停止や国内のインバウンド需要の縮小により販売数量が減少。国内事業は鉄鋼、輸送機器、化学など主要な顧客業界向け産業ガスの販売が落ち込んだ。だが、米国事業が堅調なことや、積極的な買収戦略による事業領域の拡大により大幅な増益を確保した。

 21年3月期の業績予想は売上収益が前期比2・4%減の8300億円、コア営業利益が9・2%減の820億円、純利益が17・5%減の440億円とした。新型コロナによる世界経済の悪化は第3四半期以降にほぼ正常化すると仮定するも、産業ガスや関連機器の売上収益が第1四半期に前年同期比で15%程度、第2四半期は10%程度減ると想定。半導体、液晶向け特殊ガスなどエレクトロニクス関連は現時点で直接的な影響が多くないとして増益を見込んでいる。

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