霞始めてたなびく。七十二候が雨水の次候となり、春霞がたなびき始める頃になっても、まだ寒い日が続く。冬の乾いた空気に比べて大気中に細かな水滴や塵が増え、遠くの景色がぼんやりと霞んで見える時期。視界が悪くなる一方、時に幻想的な光景をつくる。霧の秋に対して霞は春の季語だ▼山々の裾野にうっすらと広がる春霞のことを、和歌では春を司る神様の佐保姫がまとう着物の裾に例えられた。ほのかに霞んで見える山々は、のどかで春らしく感じたことだろう。関東平野に住んでいると感じることができない光景だが、記憶の中に確かに存在する▼大気中の微小な水滴が浮遊し視界が悪くなるのが霧や靄で、霧は肉眼で物体がはっきりと確認できる視程が1キロメートル未満、靄は1キロメートル以上10キロメートル未満らしい。一方、霞は大気中の他の粒子を含むこともあり気象用語として用いられていない。飛び始めた花粉もここに含まれていることを思えば、幻想的などと悠長なことばかりは言ってられない▼第6波はピークアウトしたとも言われるが、感染者数は高止まりしたままだ。まん延防止等重点措置の期限は相次いで延長され、もうしばらくの辛抱だと信じたい。コロナという塵も無くなりモヤモヤも収まって、長くかかっていた霞が晴れれば視界良好となる。その日が待ち遠しい。(22・2・24)

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