そういうご時世だから、というフレーズによく出くわす。なぜそれが悪いのか、皆がそう判断をするのはなぜか、という問い掛けの答えはいつもそれだ。江戸時代の生類憐れみの令じゃあるまいし。変なご沙汰に対し、変だよという声が通じないことを憂う▼古いものも含め、日本のアニメを鑑賞すると実に驚く。ハリウッド映画など、それらの足下にも及ばない、あるいは焼き直しに過ぎない。人類が積み上げてきた技術、知恵、教養がちりばめられている。同時に、人類の間違い、苦悩、不完全さについて深く考えさせられる▼脱炭素が何より重要で、企業価値の向上のためあらゆる数字を改善し、株価を向上させていく。そんな誰かのお仕着せで、この瞬間に流行しているだけの薄っぺらい話しでは、漫画やアニメにはならない。いま人類、あるいは日本人にとって本当に何が必要で、何を取り戻し、あるいは何を革新すべきかについて、深く掘り下げた末のストーリーでなければ、良いアニメは成立しない▼それは、現実という制約から離れたフィクションの世界だから成立するのだろうか。そういう面もあるだろう。しかし、ただ「そういうご時世だから」の一点張りで物事を判断してしまう現代人は、アニメでも見て目を覚ましたほうがいい。とルパンの孫が言ってました。(22・9・27)

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