世界の4人に1人が人生において、うつや強い不安といった精神的な不調を経験するという。そう教えてくれたのは、スウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセン。『スマホ脳』などの著作で日本でも知られているベストセラー作家だ▼近著『ストレス脳』の邦訳が7月に出版された。それによると「うつも不安も、人間が生き延びるために備えた防御のメカニズム」らしい▼人間の脳がそのようにできているのだから、不安を感じるのはしょうがない。だから、無理に幸せになろうとしなくてもいいという。とはいえ不安なままでいるのはつらい。そこで同氏が薦める対処法がランニングだ▼脳科学者の茂木健一郎によると、走ることで幸福感をもたらすエンドルフィンや、快感を与えるドーパミンといった脳内物質が多く生み出される。とくにドーパミンは、ストレス耐性があるため、ストレスが多い環境にも強くなれるという▼この話を聞いて、かつて作家の江上剛が、不祥事もあり存続の危機に立たされていた日本振興銀行の社長を引き受けるはめになったとき、走り始めることで救われたといっていたことを思い出した。ランニングは健康や美容のためと思っていたが、そうした不安を抱えているのかと思うと、公園を走るランナーの見方も変わってくる。(22・9・15)

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