サンマと並んで不漁続きなのがイカ。農林水産省の統計によると、2021年のスルメイカの漁獲高は3万1000トン。1968年のピーク時の66万8364トンに対して95%も減少したことになる。このままだとイカも高嶺の花になってしまう▼イカ好きにとって一筋の光明ともいえる研究成果がこのほど発表された。沖縄科学技術大学院大学がアオリイカの養殖技術を開発した。それも1回だけではなく10世代にわたる累代飼育に成功した。イカ類の養殖はとても難しく、世界的にも成功例がほぼない▼課題の一つが餌。イカは死んだ餌を食べないとされ、生きた餌はコストが膨らみ採算性が悪化する。研究チームはイカが生まれた時からシラスなどの死んだ餌を与えて食べられるように訓練した。食わず嫌いは若いうちに直せということか▼水の管理も重要なポイント。沖縄は3種のアオリイカ(クワイカ、シロイカ、アカイカ)すべてが生息する世界でも希有な場所。それなら住み慣れている海水で飼育することが望ましいと考え、海水を流して海に戻す「かけ流し方式」を採用した。これによってふ化後90日の生存率が最大90%に高まった▼近畿大学がクロマグロの完全養殖に成功したように、大学には目を見張る技術力がある。沖縄科技大もぜひ商業化に向けた取り組みを進めてほしい。(22・9・2)

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