昔の人は時刻や方位を干支で表していた。方位であれば、子(鼠)を北にして12等分しており、卯(兎)が東、午(馬)が南、申(猿)が西を表す。丑(牛)と寅(虎)の中間である東北が風水でいう鬼門である。鬼や雷様が牛のような角を生やし、虎柄のパンツを履いた姿で描かれるのはこのためだ▼風水や陰陽五行思想は、古代中国で生まれ発達した。中国の都は長らく黄河中流の長安(西安)や洛陽に置かれていた。放牧民族などの外敵が攻めてくるのが主に東北で、貿易風によって砂嵐が襲ってくるのが南東だった。このため、東北と南東は門を作ってはいけない方角としたと考えられている▼日本一有名な昔話の桃太郎。鬼退治に申酉戌(サル、キジ、イヌ)を連れて行くのは、西方面を示す干支が鬼門に対し有効という考えのようだ。辰(竜)や巳(蛇)を連れていく方が良いのでは、と考えるのは現代人の浅はかさであろうか▼さて、桃太郎。江戸時代には桃を食べた爺と婆が若返り、子供をもうけたという回春系のストーリーが一般的だったという。明治以降、桃から生まれるパターンに変わった。現代と同様に、明治時代にもうるさい人たちが多かったのだろう▼などと書いていると、電子版では炎上するかも知れない。ネットを伝い鬼が来る現代の鬼門とはどの方角だろうか。(22・9・13)

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