すっかり秋を感じる朝。公園を歩いていると、いくつもの青々とした塊が束になって実る木を見つけた。その形から、すぐにどんぐりだと気づく。地面に落ちている茶色に色づいたものはよく見かけるが、まだ子供のままのどんぐりの姿を目にした記憶は余りない▼どんぐりはブナ科の樹木の果実で、栗もこの一種。栗の自生種には小さな果実が付くが、一般に知られるのは大きな実が付くもの。冬でも葉を落とさない常緑樹もあり、濃緑の大きな葉の陰でどんぐりが発見しにくいこともある▼どんぐりの背比べと、どれもこれも平凡で変わり映えしない例えに使われるが、実は種類が多い。下の部分が帽子の形をした殻斗に覆われた一般的なイメージのもの、殻斗の部分に髭が生え丸みを帯びたもの。全体が殻斗で包まれたシイの実は軽く煎って食べる。それに、トゲトゲの殻斗が実を包んでいる栗だ▼どんぐりはリスをはじめ動物たちの好物だが、人間も縄文時代から食料として食べていた。沢山のでんぷんを含む貴重な食料源であり、飢饉の年も栄養を与えてくれた▼古くから人間との関わりが強かったどんぐり。どれも変わり映えしなくても、堂々と生き続けてきた。円安・資源高・物価高と現状を憂う日本。うつむいてばかりいると、どんぶりこと池にはまってしまうから用心だ。(22・9・14)

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