世界市場における成長の重心は、欧米から経済発展を遂げたアジアにシフトしてきた。アジアの一員である日本は成長の果実を手にする有利な立場にあったはずだ。しかし、日本の相対的な地位は徐々に低くなっている気がしてならない▼経済成長のバロメーターの一つが物流。世界の港湾別コンテナ取扱量ランキングをみると中国の躍進が目覚ましい。1980年の上位5港はニューヨーク、ロッテルダム、香港、神戸、高雄だったが、2020年は上海、シンガポール、寧波、深圳、広州。日本は東京、横浜、川崎を合わせた京浜の19位が最上位だった▼日本の製造業が拡大していた時代は自ずとコンテナ輸出が増えたが、中国や東南アジアに生産拠点が移転すると伸び悩んだ。外貿コンテナ取扱量は輸出より輸入が多い構造が定着している▼外航コンテナ船の日本への寄港が減少しているとの報道もあった。世界的なコンテナ物流の混乱で運航スケジュールが遅延すると取扱量が大きいハブ港を優先するため、予定していた港湾に寄るのを取りやめる「抜港」の対象になっているという▼日本の荷主にとっては積み替えの手間が増えてしまい、その分リードタイムが長くなりコストもかさむ。国際物流で“ジャパンパッシング”が顕在化すれば、さまざまな産業に影響を及ぼしかねない。(22・9・16)

精留塔の最新記事もっと見る