現場に赴くことなく、室内に居ながら新聞や情報提供者からの情報のみを手掛かりに事件を推理する探偵をアームチェア・ディテクティブという。史上初の推理小説とされるエドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」に登場する探偵オーギュスト・デュパンも、コナン・ドイル作の名探偵シャーロック・ホームズも、作品によっては室内にいながら事件を解決してしまうケースもある。しかし、大抵は居ても立ってもいられず現場に飛び出していく▼それでは記者はどうだろう。現場に赴くことなく、電話やインターネットを駆使して情報を集め発信する。実際にそういうメディアは存在するし、むしろ世界的にそういうビジネスモデルが主流になりつつある。しかし、それは模倣しようと思えば模倣でき、最終的に人の数がモノをいう世界のため資金力の勝負になる▼正反対は、愚直に現場に赴き、人から話を聞き、真犯人しか知らない秘密の暴露を感じ取ろうともがく記者であろう。時代はデジタルですよ、そんな面倒くさいビジネスモデルは廃れますよ、といった声が聞こえてきそうだ▼しかし、居ても立ってもいられず現場へ飛び出していくのが記者の本質なのではないだろうか。アームチェア・ジャーナリストなる言葉は聞いた例がない。これからも愚直に現場へ赴こう。(22・9・5)

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