シンガポールで9月に「ザ・LKY・ミュージカル」が上演される。LKYとは初代首相、リー・クワン・ユーの略称だ。会場となるサンズ・シアターが、新型コロナウイルス感染症の拡大により2年以上とりやめていた大規模なミュージカル公演を再開するにあたり、この演目を選んだ▼1941年の学生時代から65年のシンガポール独立にいたるまでの物語を描いた。初演は彼が没した2015年。5万人以上が観劇した「シンガポールで最も大きな成功を収めたショー」という▼先日、シンガポールの有力紙は元米国務長官のヘンリー・キッシンジャーが新著で卓越した6人のリーダーの一人にド・ゴール、サッチャー、サダトなどとならびLKYを選んだと大々的に報じた。他の歴史ある国のリーダーとは異なり、貧しい多民族都市だったシンガポールを国としてまとめ繁栄に導いた業績を、ガリバー旅行記になぞらえ「リリパットの巨人」と称賛しているという▼今年4月、ローレンス・ウォン財務相が、LKYの長男であるリー・シェンロン首相に続く与党の次世代リーダーに指名された。25年11月までに実施予定の次期総選挙の前後に首相に就任する見通しだ。この国が結束を維持するために、LKYの記憶はこの先も繰り返し呼び起こされるのだろう。(22・8・18)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

セミナーイベント情報はこちら

精留塔の最新記事もっと見る