日本が「観光立国」を目指し、国を挙げて取り組み始めたのが2003年(平成15年)。小泉政権の時だった。観光を力強い経済を取り戻すための極めて重要な成長分野と位置づけ、外国人旅行者の受け入れ環境整備など、さまざまな施策が推進されてきた▼東京オリンピック・パラリンピック開催決定も追い風となり、訪日外国人旅行者は16年に早くも2000万人を突破。銀座などでは中国人観光客らの「爆買い」が見慣れた光景となった。有名観光地を中心に弊害も起きて、“オーバーツーリズム”が問題となった▼19年の訪日外国人旅行者は3188万人。20年目標の4000万人達成は確実だろうと思われたところで今回のコロナ禍によって急転直下。世界全体が観光どころではなくなってしまった。4月は前年同月比99・9%減の2900人。観光需要はまさしく蒸発してしまった▼これまでの牽引役だったインバウンドの復活は当面期待できない。1・7兆円をつぎ込み需要を喚起する「Go Toキャンペーン事業」の効果も果たしてどうなるだろうか▼問題はお金より気持ち。旅好きの筆者であっても遠出が解禁されたとして、すぐに大手を振って出かける気分になれないのが正直なところ。地元・近場を訪問する“マイクロツーリズム”が再生の手がかりになるか。(20・6・12)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る