強大な冬将軍が北陸を襲った-。これではだめなのだろう。最近の天気予報は専門的過ぎる用語が使われていて、そこまで視聴者に伝えるかと思うことがしばしばだ▼先週の日本海側の大雪。その原因は「JPCZ」だという。ジェイピーシーゼットと読み上げられて、なにそれ?と思わずテレビに問い返していた。エスディージーズという音を聞いてもいまはなんとも思わないが、当初は違和感、不思議感があったことを思い出した▼JPCZは「日本海寒帯気団収束帯」の略語。専門的な説明を極々簡略化すると、大陸からの冷たい風が比較的暖かな日本海上を吹いてきて、朝鮮半島北部の山脈によりいったん二分され、日本海の上空で再合流。この風と風がぶつかることで形成される雲の発達しやすいライン、これがJPCZなのだそうだ。なるほどと思うが、長すぎて覚えていられない。だから「JPCZ」なる言葉を覚えなさい、使いなさいと押しつけられているような気がする▼物事を理屈や科学で説明できなければ、蒼鉛いろの雲(宮沢賢治)、トパーズの香り(高村光太郎)のような比喩という方法がある。もちろん冬は武装した将軍の格好などしていないけれど、冬将軍が来たといわれれば、ぶるっと体が震えそうではないか。説明しすぎは必ずしも是ではない。(22・1・19)

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