オフィス、判子、現金、テレワークしても子供の世話をしない夫など。もう必要ない、とレッテルを貼られるものが増えてきた。そして世の中は、それらを必要としない新常態(ニューノーマル)となり、もう以前の世界には戻らないという▼反対に、それほど必要と思っていなかったのに、突如として必要となり慌てたものも多い。マスク、ハンドソープ、マイナンバーのパスワードなど。パソコンの上の方に付いている、小さくて丸いアレもそうだ。つい数ヶ月前まで、それが付いていることさえ認知していなかった▼だが、その程度で済んでいるうちは幸せだ。この間、あるはずだった仕事が突如なくなり、自己の必要性が危ぶまれる事態を多くの人が経験している。世の中が新しくなっても必要とされる。そんな存在になることを考えなければならない。個人としても、組織としても▼もう必要ないはずが、いつまで無くならないものもある。政治の劣化、権力者による弾圧、人種差別など。太古から続く不条理を今も乗り越えられないのはなぜだろう▼さて、爽やかな天気に誘われ、久しぶりに歩いた公園はいよいよ緑が深くなり、夏の装いだった。植物も昆虫も鳥たちも、そして広場に集う大勢の親子連れも、全ては公園の主人公であり不要なものなどない。そんな気がした。(20・6・9)

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