2022年も早2カ月が過ぎた。この間にも世界は変異株の感染拡大、物価上昇とインフレ懸念、引き続く物流の混乱など先の読めない事態が相次いでいる。なかでも、このような事態になるとは大半の人が予想していなかったのが、黒海の北に位置する国を取り巻く情勢であろう▼人口4000万人を超えるウクライナは、小麦などの穀物のほか、半導体の製造に不可欠な希少ガスを多く産出している。化学関連では、ロシアとの間に世界最長の化学品パイプラインが存在する。全長は北海道と沖縄よりも長い2400キロメートル以上に及ぶ。ロシアの窒素肥料工場で生産された液化アンモニアが、黒海に面したウクライナの港から輸出されている▼パイプラインは旧ソ連時代の40年以上前に全面開通し、ソ連崩壊後、政治関係が険悪になる中でも両国に外資をもたらす手段の1つとして稼働を続けてきた。ロシアの欧州向け天然ガス輸出のうち数割を占めるウクライナ領のガスパイプラインは有名だが、世界最長の化学品パイプラインはあまり知られていない▼世界中が軍事侵攻を予想外の出来事と受け止めているが、プーチン氏にとっては積年の思いを実行しただけなのかもしれない。低下した支持率を挽回するためもあるのか分からないが、世界戦争に発展する恐れを生じさせた責任は重い。(22・2・28)

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