バッハやベートーベン、ブラームスのドイツ3Bもいいが、それに劣らずに好きなのがロシア音楽である。チャイコフスキー、ラフマニノフ、ショスタコーヴィチなど。これまであまり聴かれていなかったと思うが、カリンニコフもいま注目されている。34歳で世を去った天才抒情派作曲家などと言われるが、彼の交響曲1番・2番は聴くほどに魅力を増してくる▼ロシアの作曲家の音楽は、底流に憂愁というか哀愁があり、うっとりするような甘美なメロディラインが特徴と言えるだろう。もちろん、チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番のような絢爛豪華な曲もあるにはあるが、むしろそちらは例外であるように個人的には思う▼あのように繊細で抒情的なメロディーを紡ぎ出す民族性があの国にはあるのだ。しかし、いまわれわれが目にしている現実は、いったいどうしたことだろう。ウクライナに対するロシアの暴挙はとても同じ民族がしていることとは思えない。繊細な感性を共感し合う余裕がないほどに経済、そして政治の問題は過酷なのかもしれない▼地球儀でロシアを眺めてみる。東の端はアメリカ大陸のアラスカに迫らんとし、西の端は東欧諸国に接する。この途方もなく広大な国土を持つ国には、ユーラシア東端の島国からは想像も及ばない力学が働いているのだろうか。(22・3・16)

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