家庭菜園をやったことがある人や、プランターで野菜や果物を育てたことがある人ならばおわかりだと思うが、植物を立派に育てるのはとても大変なことである。しかも食用、とくに人様の食用に供する植物であれば、なおさらだ。スーパーで売っているような形と大きさに育てるのは至難の業である▼子供が小学生だったころ、ザリガニを飼育したことがある。小さなザリガニを田んぼで取ってきて、二回りくらい大きくなったところで死なせてしまった。ちゃんと餌をやっていたし、水も適宜取り替えていたつもりだったのに、である。ザリガニとエビは違うと言われるかもしれないが、こんな経験があるから、エビなどがスーパーであの値段で売られているのをみると信じられない気がする▼植物も動物も育てるのは大変。繰り返し言うが、流通に乗せられるように見栄え良くするのはさらに大変なことである。それなのに、あのように安い値段でしか売れない。差別化して付加価値を付けて利幅を増やそうと必死なのはもちろん知っているけれど▼食費を極力抑えなければ生活できない人が多いこの国であることは重々知っている。しかし、人間の生活の礎を生産する人、そしていま話題のエッセンシャルワーカーの経済的基盤がいまのような状況でよいとは思えない。(22・3・2)

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