静かに流れる川は川底が深い。反対に、川幅が狭く川底が浅い川は大抵流れが速いものだ。静かに流れる川は何十年、何百年とかけて川底が削られ、川幅が太くなった結果であろう▼弊紙は昨年、創刊85周年だったが、化学業界には半世紀、1世紀を超えて事業を展開している企業が少なくない。今年創立75周年を迎えた積水化学工業の加藤敬太社長は「イノベーションで社会に貢献するというDNAを受け継いできた結果、今がある。しかし会社や組織が大きくなり、それらが希薄になってしまう危機感も大きい」と語っている。失敗をとがめない風土を醸成し、さらなる挑戦を促している▼今年100周年を迎える旭化成。工藤幸四郎社長は「これまで倒産など大きな危機に直面することなく来たが、社会を取り巻く環境が大きく変わり、従来の延長線上の考え方では危機に陥る。変革なくして成長はないという意識が重要だ」と話す▼川底が削られていくように、企業にとって外部環境は否が応でも変化していく。そうした変化に対応するだけでなく、変化を先読みし、もっと言えば変化を自ら生み出すことができれば、画期的なイノベーションにつながる。化学にはそうした未曾有のポテンシャルがある。どんなに老舗でも、新興企業のような危機感と挑戦が未来を切り拓く。(22・4・4)

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