19年前の2003年4月7日に誕生した鉄腕アトム。といっても漫画連載が始まったのは1952年なので、登場したのは70年前になる。二十一世紀を舞台にロボットの少年が活躍するこのSFヒーロー漫画は、描かれた未来都市や科学技術力などをみても作者である手塚治虫氏の想像力に感服する▼アトムについて今一度考えてみると、現在に共通するテーマが多い。差別問題はその一つ。人間に使われていたロボットにも「人権」が認められ自由を手にする。だが、今なお残るこの問題には根深いものがあることを、アトムの世界でも描いている▼さらにエネルギー問題。三兄弟がアトム、ウラン、コバルトと名づけられたことから察するに、連載が始まった頃は原子力が夢のエネルギーと言われていた時代だろう。効率的な発電方法であることは誰も否定しないが、いくつもの歴史を経て安全神話が崩れたことで、リスクの大きさを皆が身をもって感じている▼多様性が求められる時代。あらゆるものを否定することは、その存在を認めないことになる。だが、否定しなくてはいけない事実は確実にある。人権を無視して無差別に人に危害を加えること、悲惨な結末を知っているのに原発に危険な行為を及ぼすこと。10万馬力のパワーがあれば敢然と立ち向かっていくのだが。(22・4・6)

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