大手メディアがウクライナの首都を今月から一斉にキーウと呼ぶようになった。先月末に発表された外務省の方針に重なる。発端は先月15日に開かれた自民党会合での提言。公文書で使う外国の国名・地名の基準は法律で定められている。松野官房長官は変更を検討する意向はないとしていたが、29日になって態度を変えた▼呼称を変更するだけなら法改正は必要ないらしい。ロシアと戦うウクライナとの連帯を示したものといえる。在日ウクライナ大使館は、SNSで歓迎の意を表した▼同日、政府はウクライナ人難民の受け入れに向け、政府専用機を隣国ポーランドに派遣することも明らかにした。今月4日、現地を訪れていた林外相の帰国に合わせ20人が同乗したという▼避難者が400万人を超えたとされるなかでは、ごくわずかといわざるを得ないが、日本の難民審査は厳しい。2021年の実績をみると、67カ国から約4000人あった申請に対し、認定を受けたのは47人にすぎない。そこからすれば今回の措置は極めて異例だ▼一連の対応自体に異存はない。ただ一斉に右にならうかのような状況には一抹の不安を覚える。さしたる議論もなく原理原則が棚上げされているのではないのか、誰もあらがえない空気に社会が飲み込まれようとしているのではないのか。(22・4・7)

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