神話や寓話、童話というのは、同じような話しが世界中に流布している。例えば、日本で有名な因幡の白兎の話も、シベリアやインドネシア、西アフリカなどに似たような話しが伝わっている。このうち、個人的に興味深いと思うのは西アフリカの話しだ▼ヒトがワニを助けるが、あろうことかそのワニに食べられそうになる。ヒトは命乞いをするが、迷ったワニが近くに来たロバに意見を聞く。われわれはヒトのために働くのに感謝されたことがない、と答えるロバ。絶体絶命のピンチで、知恵者のウサギがヒトを助ける。ところが今度は、ヒトが自分の娘を病から救うためにウサギの肉が必要になって…▼油断も隙もない感じがアフリカのサバンナで繰り広げられる弱肉強食の世界を連想させる。ロバの冷たい態度も、確かにそうだなと納得。ウサギはどうなったかといえば、ヒトの話しをこっそり聞いて逃げ出してしまった。そこで話しは終わるのだが、ウサギに会うと一目散に逃げていくのはこのためだ▼さて、日本の神話の話し。ウサギはワニ(サメ)に、われわれとワニとどちらが数が多いか比べよう、数えるから並んでみろ、と言うのであった。どちらが飲めるか比べよう、とグラスを並べる姉さんは、ワニの財布の皮も剥ぐ。会うと一目散に逃げたくなるのはこのためだ。(22・7・5)

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