今から約140年前、米国で電力が事業化されようとしていた1880年代に起きたのが「電流戦争」。電気自動車(EV)メーカー・テスラの名前の由来ともなった交流派のニコラ・テスラ、ジョージ・ウェスティングハウス陣営と、直流派のトーマス・エジソンが送電技術の主導権を争った▼両派の対立を描いたのが日本でも上映された映画「エジソンズ・ゲーム」(原題はTHE CURRENT WAR)。天才発明家として名を馳せたエジソンだが、ここではダークな一面をのぞかせている▼当初は直流派が先行していたが、遠距離送電が可能な交流派の追い上げを受けると、高電圧が危険で死を招くと主張。新聞記者たちの前で馬などを感電死させる「動物実験」を繰り返した。当時、新たな死刑方法として検討されていた電気椅子も交流にするように仕向けた▼大衆に恐怖心を植え付けて直流を有利に導こうとしたエジソンの振る舞いはおよそ発明家らしくない。1893年に開催されたシカゴ万国博覧会で交流が採用されたことで大勢は決した。エジソンでも負けたことがあったのだ▼今はもちろん交流と直流をうまく使い分けて電気社会が成り立っている。テスラをはじめとしたEVもバッテリーは直流で充電し、インバーターを介して交流モーターで駆動させている。(20・7・17)

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