実家が自営業で、必要だからと高校1年のときに原動機付自転車の免許を取得した。すぐに学校にバレて、親とともに教頭に呼び出された。バイクなど乗らずに部活動でもしたらどうですか、と諭す教頭先生。陸上部です。そう応えたときの妙な空気感を覚えている▼あの頃、バイクや自動車に夢中になっていた。そういう時代だった。授業も聞かずノートに憧れのバイクの絵を書いて、教師に教科書で頭を叩かれた。高校を卒業する頃には、すでに将来買う車を心に決めていた。30歳であの車、40歳であの車。そのために頑張ろうと本気で思っていた▼心のなかにもあるブレーキとアクセル。思えばいつの日からか、ブレーキを多用するようになった。出しゃばらない、無理をしない、争いを起こさない。近頃、それで良いのかと考えるようになった▼いや待てよ。大学時代、付き合っていた女性も車好きで、こっちの運転に口を出してくる。ブレーキを踏むタイミングが早いとか、侵入やレーンチェンジが慎重過ぎるとか。実は若いときから、本気でアクセルなど踏んでいなかったのではないか。上手くブレーキを使った方が良い。そう思っていたのではないか▼人生一度きり、本気でアクセルを踏もう。もう一度そう思い直す。まずはよく食べ、よく寝るところから始めよう。(21・6・8)

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