ある取材先の社長と社員採用をめぐる話をした。理科系はそう苦労はしないが、文化系の学生の採用はなかなか難しいと語っていた。この会話のくだりは笑い話で終わる。「体育会系の人材は魅力的だよね」。「あれっ、大学の系統にいつから体育会系が加わった?」▼社に戻り日本化学会のサイトで会誌「化学と工業」の巻頭言のバックナンバーを読んでいたら、菅原公一カネカ会長の「街の動きから拾う学び」という面白い文章に出会った。その中の「アスリートからの学び」という節に、ウエイトリフティングの三宅宏実さんから聞いた話が紹介されている▼要約するとこうなる。「大切なことはマンネリ化したトレーニングをしないこと。マンネリに気づくのは心地よく終わるとき。心地よい充足感を得て、満足してしまうとそれ以上の成長はない」▼この言葉に感動したという菅原さんは、この節をおおよそ次のように結ぶ。「世界一になる夢を望み続けている強靭な入魂。そして自説をもって生きている。研究者を『自説を活きるアスリート』に模して観る視点を教わった。経営力を鍛える必殺技かもしれない」▼全盛期に比べれば下火になった企業スポーツだが、もう一度見直されてもよい。強いメンタルは一般社員の目標にもなり得る。2020年が転機になるかもしれない。(20・2・19)

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