DNAの2重螺旋の直径は約2ナノメートル。人類はこれより小さいチューブを製造することができる。カーボンナノチューブ(CNT)だ。現在、CNTは0・4ナノメートルから40ナノメートルのものまであるが、小さいCNTはこれまで人類がつくった最も小さいチューブということになる▼このCNTが、NEC筑波研究所の飯島澄男さんによって発見されて、今年が30周年である。飯島さんがネイチャー誌に投稿した論文で広く知られるようになり、それ以来、世界中の研究者を引きつけている▼夢の材料といわれるゆえんはその数々の物性にある。数え上げればきりがないが、よく知られるところでは例えば、重さはアルミの半分、機械的強度は鋼鉄の100倍、導電性は銅の1000倍、熱伝導性は銅の10倍、など▼産業化、社会実装という点ではまだこれからだが、炭素繊維も発明されてから航空機材料として本格利用に至るまで40年かかったことを思いみる必要がある。応用はこれから花を咲かす時期に入っていく▼ナノカーボンの弟分であるグラフェンはすでにノーベル賞を受賞しているが、CNTはまだ。10月の物理学賞(5日)ないし化学賞(6日)の発表が待ち遠しい。ちなみに飯島さんは名城大学終身教授。同大学関係では赤崎勇、吉野彰両氏がノーベル賞を受賞している。(21・8・18)

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