伊勢丹といえば日本を代表する百貨店の一つとして日本人なら知らない人はいないだろう。海外もシンガポール、クアラルンプール、上海、天津、成都に進出しており、アジアの人々にも伊勢丹の暖簾は浸透している▼しかし取り巻く状況は厳しい。新型コロナウイルス流行により店舗が臨時休業を余儀なくされただけでなく、コロナ前からショッピングセンター(SC)やネット通販の隆盛による百貨店離れが進んでいる。海外も状況は激しく、今年3月にシンガポールの1店舗が閉店になり5店舗となったほか、8月末にはバンコク店が閉店した▼バンコク店は1992年に開業した。アジア通貨危機やリーマンショックを乗り越え、日本好きの多いタイの人々に「日本の百貨店」として28年間も親しまれてきた。バンコクには日本人駐在員や家族も多く、ファンは多かったはずだ。小生と家族も駐在時代、休日に買い物や食事に訪れることを楽しみにしていた。日本直輸入の150円前後のシュークリームは定番のお土産だった▼しかし幅広い年齢層を対象とした安定した品揃えの百貨店から、客足は確実に若者やファミリー層などにターゲットを絞った現地のSCに移っている。強みに安住することなく、変化を先取りし変わる挑戦を続けなければ生き残れない厳しい時代が訪れている。(20・9・7)

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