プロフェッショナルになりなさい。駆け出しの記者の頃、取材先のちょっとエライ人によく言われたものだ。しかし、どのような能力を備えたらプロの記者と言えるのかさっぱり分からない。したがって、本屋に行ってその手の書物を立ち読みしたり、買い求めて読んだりした。それでもよく分からなかった▼記者たるもの、世界および日本の政治・経済・文化に精通するべきだ。業界記者なので、業界の構造や歴史にも精通しているべきだ。最新の科学技術にも詳しくなる必要がある。そのうえで、高い問題意識と幅広い人脈を持ち、読者に訴える文章力を備える必要がある。相当の天才でもなければ人生3回分くらい必要になりそうだ▼この150年ほどで、日本は2度の大転換期を経験した。明治維新と第2次世界大戦の敗戦である。明治の初め頃、日本を近代国家に導いた政治家たち、あるいは敗戦後に裸一貫から起業し、日本を代表する企業を育て上げた経営者たち。そうした人たちはみな天才だったのだろうか。後に天才と呼ばれはしたが、最初は政治も経営もプロではなかったはずである▼日本がいま、再び大きな転換期を迎えているのなら、必要なのはプロではない。プロと称する守旧派を尻目に新しい価値観で世界に飛躍する、信念の人である。そんな気がする。(20・2・4)

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

精留塔の最新記事もっと見る