日本の国土面積は38万平方キロメートルと決して大きくないが、周りを海に囲まれているだけに排他的経済水域は447万平方キロメートルと陸の面積の約12倍。世界でも6番目(海外領土を含まず)の広さを誇る。海の持つポテンシャルは大きな魅力だ▼その一つが海洋鉱物資源。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)はこのほど、南鳥島南方の海山においてコバルトリッチクラストと呼ばれる海洋鉱物の試験掘削に世界で初めて成功した。もともと海底熱水鉱床用に開発した掘削機を改造した▼コバルトリッチクラストはその名の通り、他の海洋鉱物に比べコバルトの品位が高いとされる。事前の調査によると対象となった拓洋第5海山には日本の年間消費量の約88年分が存在すると期待されている▼コバルトはリチウムイオン2次電池の正極材料として使われている。生産地が偏在していることもあって価格が乱高下しやすい。コバルトの使用量を減らす技術も開発中だが、世界的な電気自動車(EV)の普及によって需要は拡大していくだろう▼もちろん今回の成果は第一歩に過ぎない。どうやって低コストかつ安定的に掘削・輸送し製錬するのか。商業化に向けた課題は文字通り山積している。それでも資源の乏しい我が国にとっては挑戦に値するテーマといえるのではないか。(20・9・4)

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