新型コロナウイルス感染症の拡大は移動の制限を招き、働きや学びの「リモート化」を促した。その影響は人口移動にも及んでいるようだ。総務省の調査によると、都道府県間の移動者は緊急事態宣言が出された4月に7・7%減、5月は31・5%減となった▼その5月には東京都が転出超過を記録した。外国人を含む移動者の集計を開始した2013年7月以降、初めてのことだ。6月は転入超過だったが、7月は転入者2万8735人に対して転出者3万1257人と再び転出超過となった▼東京への転入減少は39の道府県でみられたように全国的な現象といえる。とくに千葉、埼玉、神奈川といった近隣の県の減少が目立った▼東京一極集中の是正はこれまで国が旗振り役となって進めてきたものの、なかなか効果が出なかった。コロナ禍は期せずして、その流れを変えることになるだろうか。在宅勤務で仕事が回るようになれば、物価が高い東京にあえて住む必要性は薄れてくる▼大学のリモート受講が定着すれば就職事情も変化するかもしれない。みずほ総合研究所のレポートが指摘しているが、地方の若者が地元にとどまったまま東京圏の大学に進学できれば、地元企業にとって人材確保のチャンスが広がる。働く場所の多様化は地域の活性化につながる可能性を秘めている。(20・9・25)

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