上り坂か下り坂かは進む方向によって変わり、どちらも同じ数だけある。ただ、「上り一日下り一時」。一日かけてようやく上り着くようなところも、下りはあっという間。物事を作り上げるためには長い時間と労力が必要だが、それを壊すのはあっけないほど簡単なことである▼坂道で起きた交通事故に関する数年前の調査だが、事故を発生させた車両は坂道を下っている時に起きたケースが全体の約6割。下り坂での事故が交通事故全体に占める割合は4・6%だが、死亡事故全体では約1割まで高まる。勾配の急な下り坂だけでなく、緩やかで長い下り坂も徐々に加速する。順調に進みすぎると判断を見誤るのだ▼「上り坂あれば下り坂あり」。長い人生では、盛運の時期もあれば、衰運の時期もある。盛運の時期こそ気持ちを引き締め、衰運の時期には焦らずに努力を積み重ねることが大事であることは、これまでの経験で学んだ▼人生の折り返し地点をとうに過ぎ、下り坂も随分来た。「兎の登り坂」の諺如く、前足が短く後ろ足が長いため坂を速く駆け上ることに長けているウサギのように、得意分野で力を発揮できれば素晴らしい。だが、年齢からくるものには勝てない。下りに加速がつくこれから。超高齢社会の一端を担っていくうえで、肝に銘じることはいっぱいある。(22・6・15)

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