氷山に衝突し沈没したタイタニック号。当時世界最大の客船だったが、船長は「たとえ神でさえ、この船を沈めることはできない」と語っていたといわれている。地球はタイタニック号のように、刻々と温暖化という氷山に向かっているのではないのか。にもかかわらず、乗員たちは一等席を巡り争いに終始している▼しかし、ようやく乗員たちは航路上に氷山があることに気付き、口々にカーボンニュートラルという舵を思い切り切ろうと叫び、氷山を回避しようとし始めている。ただ、このカーボンニュートラルという舵。乗員全員の知恵を集め団結しなければ操作できないことになっている代物だ。果たして争いばかりしている乗員たちは、この舵を操作することができるようになるのか▼温暖化対策は駅伝に例えることもできる。1人のランナーがすべてを走り切るマラソンと違い、駅伝は複数のランナーたちがタスキをつなぐため、たとえ出遅れても挽回は十分可能だが、いま人類は最下位にいる。2050年のカーボンニュートラルというゴールまで、残りわずかだ。今を走る我々が挽回しなければ、次の走者である子孫にすべてツケを残してしまうことになる▼いま我々に必要なのは、無意味な座席争いを止め、次の走者に少しでも上位でバトンをつなぐ知恵と団結である。(21・5・26)

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