不透明感が増す経営環境下、新たな事業モデルを模索する企業も多いだろう。自社にないユニークな技術を持つスタートアップとのオープンイノベーションは有力な選択肢の一つ。成功に導くためには当事者たちがウインウインの関係になることが不可欠だ▼企業規模の大小にかかわらず当事者には文字通り“オープン”な姿勢が求められるが、スタートアップが不利な立場に追い込まれることがしばしばあるようだ▼公正取引委員会の調査によると、回答があった約1500人のうち、納得できない行為を受けた経験があったのは約15%で、そのうち4分の3がそれを受け入れざるを得なかったという▼大企業から出資を受ける目的でNDA(秘密保持契約)を結んで多くの情報を共有したが、出資が実現しなかったどころか競争相手になった。共同研究契約を結んで自社技術が詰まった製品の製作を大企業に依頼したところ、その技術に関連する特許を無断で出願された等々-本当にあったのかと首をかしげるような事例が寄せられている▼スタートアップ側は知財管理などに手が回らないといった事情がある。経済産業省は対策の一環としてモデル契約書を公開した。きちんとした契約はもちろん重要だが、信頼関係をどう醸成していくかが問われているのではないだろうか。(20・7・10)

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