こんなものが果たして売れるのだろうか-そう言われたのがPETボトル入りのミネラルウォーターとお茶。清涼飲料水の主役がコーラやジュースだった時代には、お金を出す価値はないと思われていた。しかし時代が変われば価値観も変わり、すっかり身近な存在となった▼業界団体の統計によると2020年のミネラルウォーターの生産量は前年比5・6%増の384万3179キロリットルと過去最高を更新した。コロナ禍で飲食店向けが苦戦した一方、家庭向けが好調に推移したようだ。この20年で市場は4倍に拡大したという▼普及のきっかけとなったのは1996年。国産小型PETボトル(500ミリリットル入り)飲料の販売が解禁された。簡単に持ち運びができるようになったことで個人消費を押し上げた。「コンピューター2000年問題」では万が一の停電対策が呼びかけられ、備蓄資材の一つとして需要が拡大した▼東日本大震災が起きた2011年にも備蓄ニーズで生産量が前年比23%増と大幅な伸びを示した。健康志向の高まりに加え、生活の安全・安心の観点から需要が着実に増えている▼それでも1人当たりの年間消費量は33・3リットルと、100リットル以上の欧米諸国に比べると少ない。日本では比較的安価で上質な水道水が手に入るからだろう。向暑の候、しっかり水分補給を。(21・5・28)

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