生物の体の中ではさまざまな化学反応が起こっている。例えば、エネルギーの源であるATP(アデノシン三リン酸)は、24時間作られては消費されるを繰り返している。人間の場合、1日に作られるATPの量は体重と同じほどで、そのために必要とするカロリーは、消費カロリー全体の半分近くにも達する▼生体化学物質であるホルモンは、さまざまな生理活性を引き起こす。有名なアドレナリンは、副腎で作られる。アドレナリンが大量に作られると交感神経を刺激し心拍数を高め、肝臓に蓄えられた糖分を血液中に放出して血糖値を高め、結果として激しい運動が可能となる▼人は激しいストレスにさらされると、戦うか逃げるかのどちらかを選択せざるを得なくなる。どちらにしても激しい運動が要求されるから、アドレナリンが大量に作られる。アドレナリンには痛みの感覚を麻痺させる感覚もあるから、戦闘、逃走のどちらにとっても都合が良い▼さて、午前11時を過ぎたころの休日のスーパーマーケット。女性達との仁義なき買い物競争の時間だ。とくに天気が良い日は混雑するのでストレスが多い。カートをぶつけ合いながら突き進む戦士達。そっちがぶつけてきたのに、なぜ睨む。化学反応を間違えたのか、気迫に押され戦意喪失。まだ修行が足りないようだ。(21・3・16)

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