年齢を重ねるとともに物忘れがひどくなり、つい口にしてしまう「あれ、これ、それ」。相手に物事を伝えようとして使うのだが、これとは別に言葉足らずを補うため擬音語や擬態語をよく用いる。雨がザーザー、肌がスベスベ、仕事がテキパキなどがそれであり、頻繁に口にしていることは想像つく▼これらの音や声、動作などを言語化する「オノマトペ」は、余り聞いたことはないものの誰しもお世話になっている。表現力を高めてコミュニケーションの円滑化に一役買っているのだ。日本だけで4500種類以上のオノマトペがあるという▼世界中で使われているオノマトペだが、とくに日本語には多いといわれている。動詞の種類が少ないことが理由の一つとされ、それを補うため増えたようだ。例えば「見る」という動詞に対して、その状況に合わせて「ジロジロ」「キョロキョロ」などを付け加える。「山々」「色々」「またまた」のように、同じ語を繰り返す畳語とは少し意味合いが違う▼オノマトペはあくまで会話の中で使う言葉であり、小学生の作文などを除けば文章中に余り見かけることはない。とくに客観性や中立性が求められる新聞記事では、柔らかい内容のコラムを除けば目にすることはないだろう。ただ、これが解禁されてくれれば語彙力の乏しさを補えるのだが。(22・8・24)

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