150年前の明治初期。日本の人口は約3500万人ほどだった。しかし20世紀に入り、空気中の窒素からアンモニアを合成し化学肥料が量産されたことで食糧不足が解消され、その後、60年余りで人口は2倍に。明治元年から100年目にあたる1967年に1億人を超える▼住友化学は、銅製錬時に発生し農作物に被害を与えていた亜硫酸ガスを硫酸として回収し肥料を製造する会社が前身だ。肥料、食品、医薬品、電気製品など、あらゆる物が善意ある化学の力によって生み出されてきた。しかし善意が失われると、危険な武器へと変わる。神経ガスなどの化学兵器はその典型だ▼サイエンス・フィクションの父といわれる小説家ジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」を読んだ科学者フォン・ブラウンは、ナチスのもとミサイルを開発。そのミサイルは多くの英国人の命を奪う。第2次世界大戦後、米国に渡ったブラウンは宇宙ロケットの開発を指導。人類は初の月面着陸に成功する▼多様性が求められる時代だ。それぞれ異なる価値観を持つ人々が個性や強みを発揮させることができれば、社会は強くなる。健全な競争や協奏によって新たなイノベーションが生まれるはずだ。ただし善意を失わないことが絶対条件である。夢を悪夢に変えてしまわないように。(22・6・6)

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