スウェーデンとフィンランドは、北大西洋条約機構(NATO)加盟へ前進した。反対していたトルコが一転して支持にまわった。両国が、トルコからのテロ容疑者引き渡し要請に迅速に対処することなどを受け入れたためだ。テロ容疑者は、事実上クルド人活動家を指す▼クルド人は「国を持たない最大の民族」とも呼ばれ、多くはトルコ、イラン、イラクが隣接する地域に住む。分離独立を求める運動が立ち上がる一方で迫害を受けてきた▼スウェーデンやフィンランドには移民や難民として渡った。とくにスウェーデンには10万人以上が住み、クルド人のナショナリズムや人権運動の発展に決定的な役割を果たしてきたといわれている▼両国がNATO加盟の意向を固めた契機となったロシアによるウクライナ侵攻。ロシア軍の戦死者は旧ソ連時代のアフガニスタン侵攻時を上回り、その大半は貧困地区で育った若者や少数民族が占めるとされている。その一方で、首都モスクワや第2の都市サンクトペテルブルクなど、国内の他の地域よりかなり裕福な地域出身者の死亡は、数えるほどしか報告されていないという▼ロシアと、フィンランドは国境を接しスウェーデンはバルト海を挟んでにらみ合う。戦争は、どちら側にいようとも弱者や少数者が犠牲になる。(22・7・7)

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